研究室概要
琉球諸島は大陸との分断と結合を繰り返してきた地史や、亜熱帯海洋性気候という地理的な条件から、島ごとに独自の生態系が築かれてきました。その特徴はこれまでの研究からも示されてきましたが、個々の種に注目すると、解明されていない生態はまだまだたくさんあります。当研究室の前身から、イリオモテヤマネコやクビワオオコウモリを中心とした哺乳類を主な対象として、基礎生態を明らかにしてきました。しかし、これらの有名な動物ですら未だに明らかにされていない生態もあります。また、その他にも琉球諸島には固有種あるいは固有亜種の哺乳類や鳥類が多数分布しています。当研究室では、これらの陸上動物の生態の解明や、これらをモデルとした島嶼適応の解明に取り組んでいきます。
また、動物と植物は切っても切り離せない関係にあります。それは、琉球諸島においても例外ではありません。島嶼では動物と植物の間でも特徴的な関係が成り立っている場合もありますが、琉球諸島ではどうでしょうか。島嶼における動物を利用する植物、植物を利用する動物という相互関係の解明にも取り組んでいます。
さらに、近年は希少性の高い種の保全も近年の課題となっています。基礎生態の解明はそれ自身が直接それらの保全に有益な情報をもたらしますが、一方でどのような要因がそれらの動物を”希少”にしているのかを把握する必要もあります。このような保全上重要な課題についても生態学的な側面から研究していきます。
これらの研究は、フィールドワークで野生生物を徹底的に観察することや、実験室でひたすら同じ作業を繰り返すなど、地道な調査の上に成り立ちます。調査は大変ですが、琉球諸島の動物の生態をひとつずつ明らかにしていきたいと思います。
<大学院生やポスドクの方も歓迎します>
他大学からの進学やPDの受け入れもしています。「Contact」に連絡先を記載していますので、お問い合わせください。
研究トピック/Research topic
●動物の生態/Animal Ecology
・ケナガネズミの食性・繁殖・生活史/Dietary habits, reproduction, and life history of endemic rats
・イリオモテヤマネコの個体群動態・食性/Dietary habits and population dynamics of Iriomote cat
・クビワオオコウモリの社会性・繁殖・採食行動/Social communication, reproduction, and dietary habit of Ryukyu flying-fox
・ヤンバルクイナの食性・行動/Dietary habit and behavior of Okinawa rail
・イソヒヨドリの繁殖・社会性/Reproduction and sociality of the blue rock thrush
・ツダナナフシの分散および対捕食者戦略/Dispersal and anti-predation strategy of stick insects
●樹洞を利用する動物の相互関係/Tree-cavity users
・樹洞利用動物相の地域特性/Local guild of tree-cavity users
・二次樹洞利用者による樹洞選択/Tree-cavity choice by secondary cavity users
●動物-植物相互関係/Plant-Animal interactions
・マメ科トビカズラ属をモデルとした哺乳類媒植物の送粉生態/Pollination ecology of mammal-pollinated plants
・哺乳類および鳥類による琉球列島産植物の種子散布/Seed dispersal by mammals and birds in the Ryukyu Archipelago
・大東諸島(海洋島)におけるダイトウオオコウモリと餌植物および塒との関係/Dietary habits and rest site selection of the flying fox in Daito Islands, the oceanic islands.
●外来動物の生態/Ecology of invasive species
・外来食肉目(イエネコ、ニホンイタチ等)の食性/Dietary habits of invasive carnivores
・外来トカゲ類(グリーンアノール等)の環境利用と食性/Habitat use of invasive lizard
・外来昆虫(ゲットウトゲムネサルゾウムシ等)の分布・生活史/Life history of alien insects
★上記の他にも陸上動植物を対象とした生態学的研究を行っています。また、学生の興味に応じて様々な動物の研究を実施していきたいと考えています。
配属や進学を考えている人は過去の卒論や修論も参考にしてください。